『戦火のランナー』 明星大学 特別先行上映会/UNHCR WILL2LIVE パートナーズ 特設サイト

戦火のランナー

明星大学 特別先行上映会/UNHCR WILL2LIVE パートナーズ 特設サイト

あなたは、これほどまでに
故郷を想ったことはありますか――

※明星大学 特別先行上映会は終了しました。(2020年11月28日)

※作品の劇場公開にともなって作品タイトルが変更となりました。当ページ内では劇場公開タイトル『戦火のランナー』と、特別先行上映会開催時のタイトル『ランナー 奇跡へのチケット』の表記が混在しています。ご了承ください。(2021年3月8日)


特別先行上映会について

『戦火のランナー』は南スーダン出身で難民でもあるグオル・マリアルが、祖国のために強い決意と国民の期待を背負ってマラソン選手として走り続ける姿に迫ったドキュメンタリー映画です。作品の日本語字幕は、明星大学国際コミュニケーション学科の授業の一つである「映像翻訳」を受講している学生が、プロの映像翻訳者とともに作り上げたものです。オンラインでの実施となった前期講義で字幕翻訳の基礎を学び、夏休みの集中講義期間に22名の学生一人ひとりが担当部分を翻訳しました。11月のオンラインでの特別先行上映会も、運営・企画・告知まですべて学生が担当します。上映会では、ゲストとしてシドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子さんを迎え、マラソンと難民との関わりなどについて学生がお話を伺います。

上映作品

『戦火のランナー』
(※特別先行上映会開催時のタイトルは『ランナー 奇跡へのチケット』)

開催日時

2020年11月28日(土)

上映時間

13時~15時30分

開催方法

オンライン(Zoom)

参加料

無料(定員あり・要事前申し込み)

ゲスト

高橋尚子さん(シドニー五輪女子マラソン金メダリスト)

プログラム予定

1. 履修生発表
2. 映画上映
3. ゲストトーク(高橋尚子さん)

主催

明星大学 国際コミュニケーション学科「映像翻訳」

後援

国連UNHCR協会

参加申し込み方法

参加申し込み締め切り:2020年11月20日(金)23時59分。応募者多数の場合は抽選となります。抽選結果は11月23日(月)にお知らせします。


<参加申し込み受付は締め切りました>


※日本国内在住者のみお申し込み・ご参加いただけます。
※教育関係者・教育行政関係者の方は問い合わせ先まで直接お問い合わせください。

ゲストプロフィール

高橋尚子さん(シドニー五輪金メダリスト/スポーツキャスター)
1972年5月6日生まれ、岐阜県出身。中学から本格的に陸上競技を始め、県立岐阜商業高校、大阪学院大学を経て実業団へ。98年名古屋国際女子マラソンで初優勝、以来マラソン6連勝。2000年シドニー五輪金メダルを獲得し、同年国民栄誉賞受賞。2001年ベルリンでは女性として初めて2時間20分を切る世界記録(当時)を樹立する。08年10月現役引退を発表。


公益財団法人日本陸上競技連盟 理事、公益財団法人日本オリンピック委員会 理事、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会アスリート委員会委員長、一般社団法人パラスポーツ推進ネットワーク理事長。その他「高橋尚子のスマイル アフリカ プロジェクト」や環境活動、スポーツキャスター、JICAオフィシャルサポーターなどで活躍中。


UNHCRと国連UNHCR協会について

UNCHRは国連難民高等弁務官事務所(The Office of the United Nations High Commissioner for Refugees) の略称です。UNHCRは、紛争や迫害により故郷を追われた難民や避難民の緊急支援、学校に行けなくなってしまった子供や家族のための自立支援など、様々な問題を国際的に保護・支援し、解決するために活動する国連の機関です。1950年12月14日に設立され、約1万2800人の職員が世界約130か国で支援に従事しています。現在、UNHCRの支援が必要な対象者は約8650万人とされています。


そのUNHCRの活動を支える日本の公式支援窓口が国連UNHCR協会です。国連UNHCR協会では、「WILL2LIVE Cinema」という映画祭を開催し、世界各地の難民たちが力強く生き抜く姿を描いた映画を上映しています。 本映画祭は2006年から13年間はUNHCR駐日事務所が主催する「UNHCR難民映画祭」として開催されており、2019年からは国連UNHCR協会主催の「UNHCR WILL2LIVE映画祭」として、そして今年は「WILL2LIVE Cinema」として開催されます。


今回の明星大学での上映会は「WILL2LIVE Cinema」のパートナーズ上映会として、国連UNHCR協会後援のもとで行われます。
[文責:2年内芝・1年伊藤]



作品について

『戦火のランナー』

激しく長い内戦が続いたスーダンに生まれたグオル・マリアルは、内戦の影響で幼い頃に家族と離ればなれになる。生き残ることに必死な毎日の中、グオルは難民認定を受け、アメリカに渡ることに。アメリカで高校に入学したグオルは、マラソンという競技を知って才能を開花させ、数々の記録を残していく。やがて、スーダンから独立を果たしたばかりの祖国・南スーダンの代表としてオリンピックに出場することを望むが、多くの壁がグオルの前に立ちはだかる。


2021年6月シアター・イメージフォーラムほかで劇場公開/配給:ユナイテッドピープル
2020年/アメリカ/英語/88分/カラー/16:9
フェアホープ映画祭2019最優秀ドキュメンタリー賞受賞
ローンスター映画祭2019最優秀ドキュメンタリー賞受賞

監督・プロデューサー

ビル・ギャラガー

脚本・編集

ビル・ギャラガー/エリック・ダニエル・メッツガー

出演者

グオル・マリアル



主人公 グオル・マリアルとは

グオル・マリアル(Guor Marial)は長距離種目の陸上選手。1984年4月15日生まれ。出身はスーダン(現 南スーダン領)ユニティ州パリアン郡。スーダンで起こった紛争の影響により、故郷を離れて難民キャンプへ。アメリカの難民受入制度に選ばれてアメリカに渡ったあと、ニューハンプシャー州のコンコード高校を卒業し、アイオワ州立大学に入学する。
[文責:2年江川、1年八木]



南スーダンを知る

東アフリカに位置する南スーダン共和国は、2011年7月9日にスーダン共和国の南部10州が分離独立してできた国で、人口は約1100万人、国土面積は約64万キロメートルです。公用語として英語が使われていますが、ディンカ族をはじめとする40以上の民族からなる多民族国家のため、民族ごとの言語もあります。


かつて、スーダンはイギリスとエジプトの共同統治下に置かれており、アラブ系住民の多い北部とアフリカ系住民の多い南部を分断するために植民地政策がとられていました。1956年、スーダンがイギリスとエジプトから独立するとき、北部と分離独立を望む南部の間で内戦が起こりました。その後、南部に制限つき自治権が与えられるなどして内戦は一時集結しました。


しかし1983年、北部のイスラム教徒中心だったヌメイリ政権がイスラム法を導入したことに南部のキリスト教徒のディンカ族らが反発し、北部と南部の対立が深まりました。その結果、第二次スーダン内戦が勃発します。2005年までおよそ22年間続いたこの内戦で、約200万人が死亡し、400万人が家を失ったと言われています。その後2011年に南部独立の是非を問う住民投票が行われた結果、独立支持が多数を占め、2011年7月に南部は南スーダン共和国として独立しました。


長い内戦の影響もあり、国土全域で開発はほとんどされておらず、水供給、教育、衛生、電力、道路など生活する上で必要な最低限のことが不足しています。分離独立後も南北の国境をめぐる紛争や戦闘などで国内の混乱は続きましたが、2017年に政府間開発機構(IGAD)が諸勢力を集めて調停に入ったことで、同年に敵対行為停止、2018年に恒久的停戦で合意しました。
[文責:2年醍醐、竹内(瑞)]




メッセージ&インタビュー

茂木健一郎さんからのメッセージ

脳科学者の茂木健一郎さんから上映作品についてのコメントをお寄せいただきました。茂木さんは、都内で開催される国際的なマラソン大会で3年にわたり国連UNHCR協会のチャリティアンバサダーを務めていらっしゃいます。


「人は走る。居場所を求めて走る。難民になってしまった人も、安全な社会で暮らしている人も、みんな走る。走るペースは人それぞれ。ゆっくりと歩く人も、立ち止まって考える人もいる。みんなが走るからこそ、グオル・マリアルの物語が心にしみる。映像が美しい。何度か泣きそうになった。」

茂木健一郎




長野智子さんからのメッセージ

国連UNHCR協会 報道ディレクターを務める長野智子さんから上映作品についてのコメントをお寄せいただきました。長野さんは、キャスターや「ハフポスト日本版」編集主幹として活躍されています。


「戦争のさなかに生まれ、故郷を破壊され、兄弟を殺され、自らの命も奪われそうになる。与えられた壮絶な運命に「走る」ことで生きようとするグォルはなぜそこまで強くいられるのか。五輪出場という夢をかなえた彼が「走る」ことで伝えるメッセージは、難民がただ困難に翻弄される人ではなく、自ら生き抜くことを選んだ誇り高い人間であることを教えてくれる。」

長野智子




明星大学学長から履修生へ(一部抜粋)

受講生の皆さんの努力で、「記録」をめざすこのランナーの物語は観客の「記憶」に残る映像作品になったことでしょう。学業の成果が社会に役立つのは大学として誇らしく、たいへん嬉しく思います。
「映像翻訳フィールドワーク」改め「映像翻訳」受講生の皆さんは、『ランナー 奇跡へのチケット』に登場するいろいろな文化的背景をもつ人々の繊細な言葉遣いに、耳を澄ませたことでしょう。それでこそ、「フィールドワーク」と呼ぶにふさわしいのではないかと思います。

明星大学学長 落合一泰
※メッセージ全文はこちらでお読みいただけます



履修生インタビュー

「映像翻訳」履修生4名に、講義の感想や特別先行上映会についてインタビューしました。
[インタビュアー:2年内芝・1年伊藤]


―なぜ「映像翻訳」を履修したのですか?

八木下さん:大学に入学する前、様々な大学のオープンキャンパスを見て回ったのですが、その時に「映像翻訳」の講義があることを知りました。他の大学では見られない講義で興味を持ち、履修しようと決めました。

馬場さん:去年も履修したこと、そしてこの大学でしか体験できない講義だからです。

小谷さん:興味のある映像を通して語学力を向上させたいと思いました。また、翻訳の仕事自体に興味もあったので、どのような仕事内容なのか実際に体験してみたいと思ったからです。


―「映像翻訳」のオンライン講義はどのように行われていますか?

竹内(瑞)さん:Zoomを使用して講義を行っています。講義では、自分が担当するセリフを訳し、グループのみんなで意見を出しながらブラッシュアップしていきます。


―オンライン講義についての印象や感想を教えてください。

八木下さん:私は対面の講義だとどうしても受け身になってしまうんですが、オンライン講義だと講師との距離も近く感じられて、自分の意見など発言しやすかったなと思います。

馬場さん:やっぱり対面でやるよりも大変でした。先生に質問をしたくても手間がかかるなと感じました。

小谷さん:最初は1人で翻訳ができるのか不安に感じていました。しかし、オンライン講義でも先生方や履修生と気軽にコミュニケーションを取れたので、悩む必要なく楽しく受けることができました。個人的にオンライン講義は悪くないと思っています。


―「映像翻訳」の講義で学んだことや得たことは何ですか?

竹内(瑞)さん:翻訳ではやはり直訳ではなかなか視聴者には通じないので、文脈に合った表現や映像の雰囲気と合った表現を選ぶ必要があります。そうした言葉のニュアンスを学べました。

小谷さん:私は、ベタかもしれませんが「One for all, All for one」の力を養えたと思います。自分ができたらOK、ではなく、1つの目的を達成するためにみんなで支え合うことを学びました。


―講義の中で印象に残っている翻訳はありますか?

馬場さん:本作でグオルが南スーダンの子供たちに向けた言葉が印象に残っています。ぜひ注目してみてください。


―映像翻訳の楽しいところは何ですか?

八木下さん:話している言葉の意味を理解することも大切なのですが、登場人物の心情を読み取り、自分なりに深く理解しながら翻訳していくことも重要です。自分の感覚によるところもあるので、言葉の意味を考えながら作り上げていくのが楽しいですね。

竹内(瑞)さん:一筋縄ではいかなくて大変だけど、だからこそ文字に起こせた時に達成感があるところです。


―反対に難しいと感じたことは?

八木下さん:自分の解釈次第で伝わる内容も変わるので、正しく理解ができているかが不安でした。また、1つ1つの字幕に入れることが可能な文字数が限られているのですが、字幕に入れたい情報が多い時に、どこを削っていくか考えることが苦労しました。

竹内(瑞)さん:自分の頭の中では伝えたいニュアンスがわかっているけれど、それを自然な言葉にして伝えるということは本当に難しかったです。


―『戦火のランナー』の見どころや、翻訳を担当した個所で工夫した点を教えてください。

竹内(瑞)さん:見どころは、グオルの母国愛の強さです。翻訳で工夫した点は、なるべく普段、使う言葉を選んで、観客の頭に入りやすい翻訳を意識しました。

小谷さん:翻訳では、試行錯誤しながら、わかりやすく、かつ読みやすい文章になるように考えました。スラスラと内容が頭に入っていけばうれしいです!

馬場さん:今回の映画の見どころは主人公グオルの変化です。彼はスーダンにいる頃に命の危険から走って逃げた過去があり、そのことから「もう二度と走ることはない」と心に誓っていました。そんな彼がアメリカにわたってから再び走ることを始めます。他にも色々な変化があるので、その変化が見どころだと思います。


―最後に、特別先行上映会の意気込みをお願いします。

八木下さん:今回はオンライン上映会という初めての試みになります。今まで講義もオンラインで行ってきました。上映会も成功させるために様々な準備を履修生全員で行っているので、少しでも多くの方に見ていただけるとうれしいです。ぜひ参加してください!

馬場さん:初のオンラインでの開催ですが、しっかりと準備して自分たちが翻訳した作品を皆さんにお届けしたいです!

竹内(瑞)さん:互いに意見を出し合いながら1つ1つの字幕を丁寧に完成させていきました。作品も本当に素晴らしく、感動的なものなのでぜひご覧ください!

小谷さん:初めてのオンラインを介しての講義を通じて、「映像翻訳」履修生全員で大切に翻訳してきました。感動間違いなしの作品です。ぜひご覧ください!


講義の特色と上映会の意義(教員より)

概要

明星大学人文学部国際コミュニケーション学科の通年科目である「映像翻訳」は、「映画やテレビ番組における映像翻訳の手法を学び、自らの手で映像作品に字幕を施すこと、さらには、その映像翻訳作品を観客に鑑賞してもらうための上映会を開催すること」を目的とする講義です。指導はプロの映像翻訳者を育成する日本映像翻訳アカデミーの講師・スタッフでもある非常勤講師5名が輪講形式で担当しています。


本講義は、2014年度の開講以来、毎年度、1年生から4年生までの合計20~30名の学生が履修。「海外の英語作品に日本語字幕を施すスキルの習得と実際の作業(前期)」、「映画祭に出品される海外ドキュメンタリー映画に日本語字幕を施す作業(夏期集中講義)」、及び「夏期集中講義で字幕を施した作品の自主上映会の企画・運営・告知活動(後期)」に取り組んでいます。加えて、後期(上映会終了後)には、「日本のテレビ番組に英語字幕を施すスキルの習得と実際の作業」も行います。


これらの講義カリキュラムは、日本映像翻訳アカデミーが行っているプロの映像翻訳者養成カリキュラムを基に、翻訳の基本的な手法、字幕翻訳のルール、映像作品の解釈法、日本語表現、英語表現(後期)を体系的に習得することを目的に組まれたものです。


※2019年度より、講義名が「映像翻訳フィールドワーク」から「映像翻訳」に変更になっています。

2017年度の講義の様子。「字幕制作ソフト」を使用し、プロの映像翻訳者と同じ環境で翻訳に取り組む。



PBL(Project-Based Learning)を採り入れた講義

本講義の翻訳作業がもつ最大の特長は、「スケジュールに従って、一般社会で実際に鑑賞される作品に仕上げる。観客(視聴者)に評価される」という点です。学生たちは、与えられた期限のなかで、出会った作品に描かれた異文化の価値観や世界観を解釈し、セリフやコメントを字幕の実務ルールに則った手法でわかりやすい表現に置き換え、観客(視聴者)に示さなければなりません。


それは上映会の企画・運営・告知活動においても同様です。講義の成果発表にとどまるのではなく、多くの観客(視聴者)に参加してもらい、満足感を得てもらわなければなりません。学生たちはそのために、演出、ゲストの選定や交渉、告知活動のための記事執筆、動画制作などすべてにおいて、実社会との繋がりを強く意識しながら活動します。その点で、上映会の成功に向けての活動は一種のインターンシップと言うこともできるでしょう。


このように、「一般社会の実務プロジェクトに準じたゴールが設定されていること」が本講義の基軸に据えられています。そのため、作業計画の立案や個々人の役割と責任の明確化など、ビジネス社会で求められるスキルや意識の習得につながる指導を心掛けています。


上映会の意義

今年度の上映会には、3つの側面があります。1つめに、難民をテーマにした作品を上映する、国連UNHCR協会後援のイベントであること。2つめに、オンラインの講義を経て開催されるオンラインのイベントであること。そして3つめに、劇場公開を控える作品の特別先行上映会であることです。


1. 難民をテーマにした作品を上映する、国連UNHCR協会後援のイベント

今回の上映会は、「UNHCR WILL2LIVEパートナーズ」の上映会として、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の活動を支える日本の公式支援窓口である国連UNHCR協会の後援を受けて開催されます。「UNHCR WILL2LIVEパートナーズ」は、国連UNHCR協会が主催し、映画を通して難民問題への理解とポジティブな共感を広げる「UNHCR WILL2LIVE Cinema」(旧・UNHCR難民映画祭)の取り組みに賛同する学校や企業が行う上映イベントの総称です。


講師陣の本務先である日本映像翻訳アカデミーでは、「UNHCR WILL2LIVE Cinema」の主旨に賛同し、毎年、難民をテーマにしたドキュメンタリー作品の翻訳にボランティアで協力してきました。今回の『戦火のランナー』も国連UNHCR協会から翻訳依頼を受けたもので、「映像翻訳」を履修する明星大学生とプロの映像翻訳者が分担して日本語字幕をつけています。


アフガニスタン、シリア、ロヒンギャなど、世界では今も難民・避難民の問題が絶えることがありません。そのうえ、今ではコロナの感染危機が、厳しい環境下で避難生活を強いられている難民にも及んでいます。「映像翻訳」の講義では、学生たちは作品の翻訳や上映会開催のため、映像に映し出された世界に長時間向き合い、そこで描かれている出来事や作品の背景を観客(視聴者)に伝えるために知恵を絞り、工夫を凝らします。


世界で今まさに起きている問題を深く理解し、異文化の事情やまだ見ぬ世界に対する興味や疑問を抱く。そして、それを自分事として捉え、他者に伝えるためのコミュニケーション方法を模索する――。これらは「映像翻訳」ならではの活動と言えるでしょう。


2. オンラインの講義を経て開催される、オンラインのイベント

コロナウィルス感染防止措置として、現在は多くの大学でオンライン授業が導入されています。「映像翻訳」も今年度は、前期・後期はZoomを使用した全面オンラインでの講義、夏休み期間の夏期集中講義のみ対面とオンライン併用での講義となりました。また、今回の上映会もオンラインで開催し、それに向けた学生たちの企画や告知活動などもすべてオンラインでコミュニケーションを取りながら進めています。


ほとんどの学生が初めて経験する大学の講義・イベントなどの全面オンライン化は、教育効果や学生のモチベーション維持などの面で課題も少なくなく、その是非が大きな注目を集めています。その一方で、コロナ禍の終息が見えない状況では、オンライン化は当面の間、続くことが見込まれます。


「映像翻訳」においては、すでにオンライン中心とした前期・集中講義を経て、『戦火のランナー』の日本語字幕を完成させました。また、この特設サイトでも垣間見えるように、上映会の成功に向けて学生たちは活発に活動を続けており、現時点においてもすでに大きな成果を挙げています。上映会では、作品上映の他にも学生発表やゲストスピーチなどの企画も進んでおり、オンラインでの講義やイベントにおける可能性を大いに感じさせる上映会になるはずです。ぜひ上映会で、学生たちの活動の成果や教育効果をご覧ください。


3. 劇場公開作品の先行特別上映会

『戦火のランナー』は、2021年にユナイテッドピープル株式会社の配給で劇場公開されることが決定しています。作品では難民であるマラソン選手がオリンピック出場を目指す姿を描いており、2021年に開催が延期された東京オリンピック・パラリンピックにも関連して公開時には大きな反響を呼ぶことでしょう。


今回の上映会は、その劇場公開に先立つ特別上映会でもあります。今回の上映会と同じく、劇場公開時にも、「映像翻訳」を履修する明星大学生とプロの映像翻訳者が分担してつけた日本語字幕が使われる予定です。自分たちが手掛けた日本語字幕が劇場で公開され、大勢の方の目に触れる――そのことは履修した学生たちにとってはもちろん、翻訳や英語学習に関心を持つ学生にとって大きな励みとなるはずです。作品の内容とあわせて、字幕の出来栄えにも注目してみてください。

2019年度上映会の様子。ゲストに認定NPO法人難民支援協会の伏見和子さんをお招きし、学生とトークを行った。


「映像翻訳」で過去に翻訳・上映した作品

2014年度 『無国籍を生きる』
(2014年/50分/ヴィラ・ソミア、マシュー・フィルモア監督)

フィリピン南部の内戦から海峡を渡り、マレーシアのサバ州に逃れてきたフィリピン人たち。後の世代交代により新しい世代の人々は国籍を失い、無国籍となってしまう。政府からの援助も受けられず、過酷な環境に置かれた無国籍の家族の姿を描くドキュメンタリー。


2015年度『アントノフのビート』
(2015年/68分/ハジュージュ・クカ監督)

南部スーダンが独立したあとのスーダン共和国では、アラブ系住民は強者、アフリカ系住民は弱者として民族・人種差別が起きていた。そんな中でヌバ山脈や青ナイル州に住むアフリカ系住民は南スーダンへの帰属を要求するが、政府はこれを抑圧するため、爆撃機アントノフで空爆を実行する。


2016年度『ストーム・ストーリーズ ~戦禍を逃れた子どもたち』
(2016年/72分/デヴィッド・メイソン監督)

戦争により、イラク、シリア、イラン、アフガニスタン、セルビアなどからオーストリアに逃れてきた難民の子供たち。彼らが通う学校では、傷ついた心を癒すため、祖国から離れる原因となった体験をもとに脚本を書き、自分たちで演じるという特別なプログラムが組まれていた。教師、生徒たちが協力し、新しい人生を歩みだした子供たちの姿を追う。


2017年度『ノーウェア・トゥ・ハイド ~あるイラク人看護師の記録~』
(2017年/86分/ザルダシュット・アフマド監督)

イラク中部の町、ジャローラの「死の三角地帯」と呼ばれる地域の病院で救急医療の看護師として働くノリ。初めは患者の様子を撮影していたが、じきにジャローラも武装組織ISISの侵攻を受けるようになってしまう。ノリは家族とジャローラを去ることを決断し、今度は自身の状況を撮影するようになった。激動のイラクの現状を映し出したドキュメンタリー。


2018年度『ソフラ ~夢をキッチンカーにのせて~』
(2018年/73分/トーマス・モーガン監督)

フィリピン南部の内戦から海峡を渡り、マレーシアのサバ州に逃れてきたフィリピン人たち。後の世代交代により新しい世代の人々は国籍をレバノンの難民キャンプで生まれ育ったパレスチナ難民のマリアム。彼女は難民としての運命を変えるべく、ケータリングビジネスを起業しようと試みる。難民であるがゆえの障害にぶつかりながらも、同じ境遇の女性たちと力を合わせて困難を乗り越えていく。


2019年度『ミッドナイト・トラベラー』
(2019年/87分/ハッサン・ファジリ監督)

本作品の監督でもあるハッサンが撮った映画に反感を持ったイスラム原理主義集団タリバンは、ハッサンに死刑宣告を下す。危機感を覚えたハッサンは、祖国アフガニスタンからの逃亡を決断。妻と幼い娘2人とともに陸路でヨーロッパを目指す。その危険な道中をハッサンはスマートフォンで撮影する。


[この項の文責:2年江川、1年八木]


コンタクト

参加お申し込み

<参加申し込み受付は締め切りました>


※応募者多数の場合は抽選となります。抽選結果は11月23日(月)にお知らせします。

※日本国内在住者のみお申し込み・ご参加いただけます。



お問い合わせ

明星大学国際コミュニケーション学科「映像翻訳」講師/ 日本映像翻訳アカデミー 学校教育部門
桜井徹二(さくらい てつじ)
tetsuji○sakurai★h.meisei-u.ac.jp
※上記の「○」を「.」に、「★」を「@」に置き換えてください。

Instagram

Facebook